技術士試験の筆記試験では、課題と問題を明確に解答する問題がいくつかあり、課題と問題点の違いについて、当初は非常に悩みを抱えるポイントだと思います。
例えば、令和5年度の機械部門の必須問題では、以下の様な問題が出ています。
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社会インフラに関連する機器・設備では,ひとたび事故が発生して稼働が停止すると,その影響は事業所内に留まらず,我々の社会生活にまで及ぶ恐れがある。その際,公益が毀損されるだけでなく, 直接的若しくは間接的に公衆の安全が損なわれることも想定 される。そのため,事故発生直後から稼働再開に至る各局面で, 迅速かつ適切な対応が求められる。
上記の状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。
(1)社会インフラに関連する機器・設備において,故障や破損などに起因して公衆に影響を及ぼす重大な事故が発生した際の事故発生直後からの取組について,当該機器・設備の運用・管理を統括する技術者としての立場で,多面的な観点から3つの課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで, その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を, 機械技術者として示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても残存しうる若しくは新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり,技術者としての倫理, 社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
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設問(1)で課題を抽出せよと問われています。
問題点を問われているわけではないので、ここが要注意なポイントなんです。
ただし、一方で技術士のコンピテンシーでは「問題解決」の能力が求められています。
「課題解決」ではないんですね。
その「問題解決」の定義は、文科省のHPには以下の様に書かれています。
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- 業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
- 複合的な問題に関して,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。
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だんだん混乱してきますよね。
例えば、製品を開発する場合、製品仕様などあるべき姿(ゴール)が設定されると思います。
その時に、何らかの評価軸においてギャップが発生すると思います。
そのギャップが、「問題」というわけです。
当然、「問題」はいくつかの評価軸において、それぞれありますので、1つだけではなく複数あります。
その複数の問題、すなわち複合的な問題を調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析することが、技術士には求められているのです。
さらに、それらの問題を分析した結果、問題を解決する上で障壁となるもの(なすべきこと)が「課題」となるのです。
なすべきことが課題と考えると、その次の設問にある「解決策」は考えやすくなりますね。
鈴木技術士事務所のHP